Forum     Guest book     Search
 

40代のノルウェー人達が攻撃を開始 <CD−Kritik(ドイツ) 08/03/02>

CD−Kritik(ドイツ) より ゲスト評論家 マイク・ヒレンブラント 訳:みこ

ノルウェーのバンドa-haが80年代リバイバルの波にのって用意周到なカムバックを始めたのは、2年前のちょうど今ごろだった。アルバムのタイトルは『Minor Earth, Major Sky』で、発売された週にはドイツチャートの1位に踊り出て、それに続いて、多くの注目を浴びたライブツアーが開始された。「カムバック」作戦は大成功との評価を得たが、評論家たちの間では、このカムバック・アルバムの成功は、暖かみの無い過剰なプロダクションのクオリティが高かったというよりも、慎重に計画されたPR活動のクオリティが高かったからだという声もあった。

2年後の今回、a-haは批判から学んだということの証明として、4月29日にリリースされるニュー・アルバム『Lifelines』からの新曲を音楽記者たちに公開した。

『Minor Earth, Major Sky』のプロダクションを批判する声は音楽評論家だけでなく、a-haの中からもあがったので、今回a-haは様々なプロデューサーたちからなるチームを招き(イギリスのクライブ・ランガー、アラン・ウィンスタンリー、イアン・カペル、アメリカのスティーブン・ヘイグ、スウェーデンの "ノイド" こと、マーティン・ランドクヴィストなどが参加している)、15曲に取り組ませたのである。オスロのスタジオとロンドンの2ヶ所で、そしてニューヨークとマルメでも、a-haのニュー・アルバムのレコーディングが行なわれたのだが、おそらく、このようなことをしたアーティストは他にはいないだろう。

しかし、バンドに新しい光を投げかけることになったのは、この様々なプロデューサーたちだけではない。1985年以来、ポール・ワークター=サヴォイはa-haの曲の90%以上の作詞作曲を、自分一人で、またはキーボード・プレイヤーのマグス・フルホルメンやシンガーのモートン・ハルケットとの共作で行なってきたのに、今回彼はわずか6曲を担当したのみで、しかもその曲は彼のもうひとつのバンド、Savoyと似たようなスタイルのものになっている。残り6曲はマグス・フルホルメンとモートン・ハルケットの作品である。ニュー・アルバムのこれらの曲を聴けば、40代を迎えたミュージシャンたちはティーン向けのバンドというイメージを完全に払拭したことが分かる。確かに彼らはDavid Zプロデュースの1993年のアルバム『Memorial Beach』でも同じことに挑戦してはいたが、今回は90年代のように商業的な成功を犠牲にすることなく、ついにやり遂げることができたのである。それは『Lifelines』の曲は『Memorial Beach』のグランジ風でモダンなプロダクションとも違うが、『Take on me』のような3人のノルウェー人たちが、遠くへ置いて来た過去のものとも違っているからである。

そういうわけだから、今でも昔の曲を高く評価していたい人たちには、昔の曲も収録されているライブDVDが5月に発売されるので、そちらをお薦めする。それに北欧では、ファンにはうれしいことに、ファースト・アルバムの『Hunting High and Low』が新しいプロダクションで再リリースされると発表されている。

このようにa-haは過去と決別し、あるいは将来へ向かうことにしたように見える。『Lifelines』での費用のかかるプロダクションがそれだけの価値があったかどうかは、チャート上で、そしてツアーで成功するかどうかで分かるだろう。ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールを含めヨーロッパ中のホールですでに公演が予定されている。a-haのマネージメントは近いうちに、3人のノルウェー人たちが若い頃締め出されてしまったアメリカ市場にも攻撃をしかけるつもりである。今回は状況が違っているのだ。40代に入った3人の男たちは周到に計画を練ってきて、攻撃を開始しようとしているのである。

各曲解説

Lifelines - a−haのアルバムのタイトル曲となったバラードは、『Hunting High and Low』『Stay On These Roads』『East of the Sun』『Memorial Beach』など優れた曲ばかりだ。『Lifelines』も例外ではない。2枚目のシングルとしてリリースされることが予定されているこの曲は、このアルバムの最初のハイライト部分であり、またa-haには珍しいタイプのリフレイン・コーラスで驚かせてくれる。

You Wanted More - 『You Wanted More』は、エネルギッシュで、モダンで早いテンポのビートの曲である。これまでa−haの曲にはほとんど無かった特徴が見られる。それはこの曲は "踊れる" ということだ。

Forever Not Yours - ニュー・アルバムからのファーストシングルはフルホルメンとハルケットによる作品で、おそらく、最も商業的に成功する可能性のある曲だろう。細やかで、テンポの速いピアノによる主題部を持った曲だが、ところどころ物悲しく響くビートや、出だしのハルケットの有名なファルセットなど、2年前の大ヒット曲『Summer Moved On』を彷彿とさせるとこともある。ヒット確実な良作。

There's A Reason For It - Savoyとa−haとの出会い。この曲のクレジットを見なくとも、このミッド・テンポの悲しげな曲に、ワークター=サヴォイのもうひとつのプロジェクトの影響をみつけることができる。

Time And Again - ニュー・アルバム中、タイトル曲に続いて、2曲目のスローなバラード。おとなしい曲だが、リフレイン部分が耳に心地よい。

Did Anyone Approach You? - 間もなく行われる『Lifelines』ツアーで観客を興奮させるのに完璧な曲。陽気でわくわくする曲。

Afternoon High - 音楽評論家の間ではすでに、2002年夏のヒット曲になるのではないかとの予想も。レコード会社に言わせれば、ビートルズの影響が濃い曲なのだそうだ。これに懐疑的な人でも、この曲のクオリティについて言えることはただ一言。ナイス。

Oranges On Appletrees - a-haが新しく使うようになった、複数の声によるコーラスが特徴的なアップテンポの曲で、以前のa-haでは聞かれなかったタイプの曲だ。

A Little Bit - 地味な曲に聞こえるかもしれないが、じつは確実に共感を生む曲。ライブツアーでは絶対にやってほしい。

Less Than Pure - 『East of the Sun, West of the Moon』や『Memorial Beach』ですでにやった曲と似ている。しかし『Less Than Pure』の方がリズムがダンサブルなものになっている。

Turn The Lights Down - ニュー・アルバムでは、ポール・ワークターがもはやクリエイティブな役割を独占しているのではないように、ボーカルについてもハルケットの声だけが独占しているのではない。この変化の頂点は、2000年の『Minor Earth, Major Sky』ツアーに同行した、ノルウェーの人気スター、アンネリ・ドレッカーとのデュエットである。しかし、この曲が商業的に成功する可能性があるかについては、微妙なところだ。

Cannot Hide - おそらく、"現代的なa-ha" の曲の中ではベストの作品。ロック調で、比較的アップビートで、ダンサブルな曲。

White Canvas - 楽器と声がしっかり絡み合った音作りで、非常に耳に心地よいバラードに仕上がっている。

Dragonfly - マグネ・フルホルメンの作であるこの曲はa−haの作品となる前に、彼自身が歌ったことがある。モートン・ハルケットの歌ったバージョンは良くも悪くも、オリジナル・バージョンの風変わりなところが無くなってしまった。

Solace - アルバム『Lifelines』の最後の曲は、再びバラード曲で、3人のノルウェー人お得意のスタイル。はかなく移り行くものへのメランコリーを歌った曲。

結論:かつてティーン向けのスターだと誤解されていたアーティストのニュー・アルバムは、費用のかかったプロダクションと、ソングライティングの "序列" を変えたことで、これまでになく深みのある作品をつくりあげた。少なくともa-haのアルバムの中でも最も優れたもののひとつであろう。

評価:6点満点の5点

2002-03-08 | EDIT
トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.a-hafansiteinjapan.com/mt/mt-tb.cgi/2772